「よっ、若!」

俺が片手を挙げて軽くあいさつすると、若も小さくうなづいてあいさつを返して来た。

「……めずらしいですね、宍戸さんが図書室に来るなんて…」

こいつの憎まれ口にはもうなれたが、可愛くねぇなと思っちまう。

「う、まぁな…跡部に宿題出されちまって、辞典探しに来たんだ」
「…辞典なら前から二番目の棚ですよ」

視線は本に夢中だが、指はちゃんとその棚をさしていた。 若は図書室常連組とは知ってたけど此処まで場所がわかってるとすげぇと思うな。

「おう、サンキューな。……若何の本読んでるんだ?」

本にはあんまり興味無いが後輩が読んでるとやっぱり少し気になる。

「“怖い話”ですよ。…読みますか?」
「あぁ、俺そういうの平気なんだぜ♪」

若から渡された本のページを開いた。


「どうでしたか?」
「…ふ、普通だったな!余裕だぜ!!」

内心、全然余裕じゃなかった。確かに怖い話ではあった、学園七不思議だしな…… だがな若、あぁいうのは「怖い話」じゃなくって「グロイ話」っていうんだ!! 何であんな描写がリアルでグロテスクなんだ!? 中2坊主がそんな物真顔で読むんじゃねぇ!!と叫びたかったが頑張ってこらえうつむいた俺の目には 若の口がニヤリと笑った気がした。

「実はですね、此処にそれの続編が…」
「悪ィ、用事思い出した!!じゃあな若!!」

良いスタートダッシュをした俺の耳には、

「ちっ、にがしたか…」

という若の呪いの言葉が響いてた。



図書室常連者

fin.








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日吉が宍戸をイジめる話。そして宍戸視点です。
個人的に日吉は図書室常連組だと思う(後、忍足とか滝も)
ちょっと宍戸が哀れですが書いていて楽しかったです(笑

八咫鏡  背景写真:月影ロジック

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